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ヒマつぶし情報

2021.02.03

ぱどタウンで君に恋をした

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――私の、過去の恋の話をひとつしよう


あの時、君に恋をしてなかったら きっと死んでいたかもしれない


あんたは、親の言う事聞いてればいいのよ

親がいなけりゃ何も出来ない子供のくせに

あんたの夢なんて、くだらないわがままよ

あんたにできるわけないじゃない

あんたの言う事に共感してくれる奴なんて、あんたと同じ程度の頭の悪い連中の戯言に決まってるじゃない

同情してもらって、悲劇のヒロイン気取り? 馬鹿じゃないの、可哀想



三兄弟の一番上。

父親は全員違う。

母親は毎日水商売に出て、昼間は一日寝ていて起きて来ない。

母親が一番下の妹の世話をしているのは、あまり見た事が無かった。


母親は旦那がいるのにも関わらず、店のお客に〝女〟として見てもらうのに必死だったようだ。


高校に上がっても、私は携帯を持たせてもらえなかったし、母親がそんな感じだから遊びに行った記憶もあまりない。


朝起きて、


・妹を起こして、保育園の準備

・学校に行く前に妹を保育園に連れて行く

・学校が終わったら、妹のお迎え

・夕飯の支度

・妹をお風呂に入れる

・洗濯物を畳んで仕舞う

・妹を寝かせる


そんな毎日のルーティーン。

反抗すれば、未成年を盾に言葉でねじ伏せられる。


誰に相談しても、解決なんかしない。

児童相談所的な場所も考えたけど、物理的な虐待を受けているわけじゃなかったし、そもそも三人目の父親が役所勤めだったから頼ろうと思えなかった。

学校も『家はみんなと違う』と少し達観していたせいか、馴染んでいたかと言われれば首肯し兼ねるかもしれない。


逃げられない――


私という存在が全否定されて、どこにも居場所がないような気がして、毎日死にたかった。

高い所に立つと心が穏やかになったし、そういう想像も毎日してた。

一歩踏み出したら楽になれると何度も思った。


何でそうしなかったかは、長くなりそうなで今回はやめておこうと思う。


高校一年の夏


そんな私の唯一の楽しみは、母親が夜仕事に行った日に隠れてやるパソコンのコミュニティーサイト『ぱどタウン』

今で言う、アバターゲームみたいなものだと思う、多分。アバターゲームに詳しくないので、何とも言えないけれど。


HTML系タグを素材サイトとかでコピペして、自分の部屋や背景、書き込み欄をカスタムするのだ。

人によっては、黒歴史のかたまりじゃなかろうか。分かんないですけど。


ある日、友達募集スレに書き込んだ私の書き込みを見て、一人の子が来てくれた。

文面は別に大した事はない。

よくある、自己紹介のテンプレート的な文章だ。


あ、この人とは長い付き合いになる


確信めいた直観。

根拠は何もなかったけど、何故かそう思ったのだ。


それから、私はパソコンのアドレス。

相手は携帯のアドレスを交換して、毎日連絡を取った。

自分より二つ年下の男の子。

ネットで知り合った恐怖感とかはなかった。

多分、最初の直観があったからだと思う。

朝少しだけ早く起きて、メールを確認する。

なんてことない他愛無い会話。


それでも、私の世界に色が付くには十分だった。

知り合った当初、お互いの顔も知らなかったのだから、一目惚れとも違うのかもしれないけれど、あれは確かに恋だった。


彼のために生きよう


彼と出会ってから、私の世界は本当に変わったと思う。


母親は相変わらずネグレクト気味だったし、学校も何も変わらない。


だけど、


今日の朝は、メールが返って来てた

帰ったらメールが返って来てるかもしれない

いつか実際に会ってみたい


いつか実際に会える日が来るまでは死ねない――そう思った。

それだけが、私の生き甲斐になった。


私は今も昔も関東住まい。向こうは、関西。東と西。

簡単に会える距離ではない。


告白なんかもした。振られたけども。

お互い10代。重かったよな、すまん。


それでも諦める事は出来なくて、勝手に好きでいた。

一方的な片思いだ。


向こうに彼女が出来ても、別に構わなかった。

偶然だろうがなんだろうが、私が一番しんどい時に私の心の一番近い所に彼がいたから。

本人にその自覚があろうがなかろうが、私が救われたのは事実だから。

彼が何かしんどい事に直面した時、精一杯力になってあげよう。


そう思っていたから、重いと言われても「ごめん」と言いながら、好きで居続けた。

時々気が向いた時に、メールの返信や声を聞かせてくれたらいい。

高校二年くらいに、ようやく携帯を持たせてもらえた気がする)


それ以外は何も求めない。私が勝手に好きなだけ。

それから10年ちょっと

それから10年ちょっと。


二人とも大人になって、彼と会う機会があった。10年経って初めてだ。


その頃にはお互い頻繁に連絡を取る事はなくなっていたけど、互いの誕生日とかお正月とかそういう時に連絡し合う関係。

あと何かお互いにしんどい事があった時とか。


柄にもなく、ちょっとテンション上がった。だって10年だ。

そこにもう恋愛感情はなかったけど、付き合いだけは長かったから。


彼の真意は分からないけど何か思う所があったから10年間、連絡を取り合ってくれていたのだろうと思う。

お互い、住んでるところが近ければもしかしたら結婚とかしてたかもしれない。


初めて会ったのに、初めて会った気はしなくて、ちょっと久しぶりに会った友達みたいな会話をずっとしてた気がする。

多分、自分で思ってる以上にテンション上がってたんだと思う。

正直あまり覚えてはいない。

ただ、楽しかったのは覚えてる。


もうお互い大事な人が別にいたから、多分会う事はないだろう。


だけど、彼に恋した記憶を私は一生忘れないだろうし、あの時彼に出会えて良かったと心の底から思う。


時々、何か決断しなきゃいけない時とかに親に言われた言葉が頭を過って死にたくなる事はあるけれど、あの時程辛くはない。


彼との記憶、社会という大きな集まりの中で、周りの人たちが私という人間を肯定してくれるから、大丈夫。


この記事の中の人。

千葉ニュータウンのヴィレヴァンスタッフ。


Twitter:@vv_chibaNT


派手髪にしだした事で、ちっさいヤンキーと言われるが実際はただの引きこもりオタク。

最近、金髪じゃないと落ち着かなくなった。最早、私のアイデンティティー。


2次元・2.5次元・声優・実況者・タイBL


好きな物を好きな時にがモットー。

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